結婚式まで3週間を切ったその日、新たな事件は起こった。
『速報! 母、入院』
兄よ、緊急性と緊迫感を伴う連絡の割には緊張感がないぞ、そのLINEは。
まぁ、いますぐに命がどうこうということは無いとは読み取れるが、とにかく詳細を知りたい。
元々持病があるとは言え、この時期に入院とは熱中症も併発したのか?
結婚式には出席出来るのか?
え? 面会は週明けまで不可?
兄の方もバタバタしているとかで、なかなかこちらの知りたい情報が発信されないまま数分後、今度は結婚式場のプランナーさんからメールが入る。
『互助会の会員証の提示を2週間前までにとお願いしていましたが、ご準備は出来ていますでしょうか』
え? そうでしたっけ。嫌だ、忘れてた。
て言うか、会員証は実家だし、管理しているのは母だし、その母は入院して面会謝絶だし。
会員証の提示が出来ないと、互助会のプランが利用出来ないし。
割引が適用されず、費用が一気に跳ね上がるわけで……。
えぇぇ~、いやだぁぁぁ~、なんなのこの展開。
職場で無言で頭を抱える私。
私の住まいが1年前までは汚部屋だったことは、このブログで散々書いた。
そして、その血統は母から受け継いでいる。
母の部屋は、所謂『魔窟』
家族の誰も、挑もうとはしない。
母本人のいない魔窟の中から、どんな形式の物かも分からない会員証を探し出すなんて可能なのだろうか。
頭を抱えている場合では無いと思い直し、兄に追撃のLINEを送る。
「互助会の会員証なんて知らないよね」
「知りません。あの部屋は私には無理です」
ですよね。
これはもう、私自身が乗り込むしかない。他の誰でもない、私の結婚式なのだから。
幸い母とはLINEのやり取りが出来ており、ドクターからも私の結婚式には「出させます」と言っていただいた。
部屋のどのあたりに会員証があるかを聞きだし、兄にも事前に突撃することを伝えたうえで、意を決して、虹夫さんとも相談して仕事帰りに実家へ向かった。
当日、兄は仕事で不在だったが義姉には話が通っており、私は挨拶もそこそこに急いで母の部屋へ向かった。
見るなり腰が砕けそうな凄まじい物量の部屋の中へ、躊躇なく足を踏み入れる。
事前に聞き出していたポイントに立つと、2~3個荷物を横へどける。
出てきたのは、私が小学生の頃には既に存在していた貴重品の収納ケース。スライド式の上蓋を開けると、契約関係とか保険関係などが分類できる沢山のポケットがある。
そんなケースが、【横倒し】になってそこにいた。もう嫌な予感しかしない。
古くて硬くなっていた蓋をこじ開け、ポケットのひとつひとつを念入りに確認する。
3周した。見つからない。
出てくるのは、私たち兄弟の書いた手紙や初任給や初ボーナスの明細。
……こんなもの、大切に残していたのか母。
そのケースは雑に扱ってたけど。
て、感慨にふけっている場合じゃないんだ今は!
互助会の会員証どこやねーん!!
その時、脳内に閃きが走った。
『仏壇の引き出し』
ケースはそのままに、義姉のもとへ向かう。
「見つかった?」
「無い! でも、もしかしたら仏壇の引き出しに無いかな」
すぐに義姉と一緒に仏間へ。義姉も手伝ってくれようとしていたが、なんと、ひとつ目の引き出しから速攻で『互助会』の文字の入った古い封筒を発見。
あったー!!!
きちんと亡き父の3口分と、亡き祖母の1口分の会員証が出てきたのだ。
おかん、何が貴重品の収納ケースだよ。
たぶん、見かねた父が私の脳内に呼び掛けてくれたのだろう。
ありがとう、父。
これらの間、約30分も車の中で待っていてくれた虹夫さん、ありがとう。そしてごめんなさい。
こうして無事、本日結婚式場へ会員証を届けることが出来たのであった。
マジ安堵である。
プランナーさんから、次の打ち合わせが最後だと言われて「あと何か確認したいこととか無いですか?」と聞かれたけれど、まだ何か事件が起きそうで、絶対に何か抜けや漏れがあって大事になりそうで、言葉を濁すしかない私。
不安しか無いのだが、虹夫さんはそれさえも楽しもうと言ってくれる。
結婚相手がこの人で本当に良かったと思えて、心から感謝しかない。
今、互助会で積み立てをしている方。
過去に積み立てていた会費を、いずれ利用としようとお考えの方。
会員証の在り処は家族に明確にし、分かりやすい場所に保管しておきましょう。